VTXは「Video Transmitter」の略称です。
日本語では「映像送信機」や「映像伝送装置」と呼ばれます。
FPVドローンには小さなカメラが搭載されています。しかし、カメラだけでは撮影した映像を操縦者へ届けることができません。
そこで必要になるのがVTXです。
カメラが捉えた映像をVTXが電波へ変換し、離れた場所にいる操縦者のゴーグルやモニターへ送信します。
VTXの最も大切な役割は、機体から操縦者へリアルタイムの映像を届けることです。
一般的なFPV映像は、次の順番で届きます。
それぞれの役割を簡単に分けると、次のようになります。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| FPVカメラ | 機体前方の映像を撮影する |
| VTX | カメラ映像を電波で送信する |
| アンテナ | VTXの電波を空間へ放射する |
| ゴーグル・VRX | VTXから送られた映像を受信する |
| ディスプレイ | 受信した映像を操縦者に見せる |
FPVカメラが「ドローンの目」だとすれば、VTXは、その目で見た景色を操縦者へ届けるための「中継役」です。
VTXがなくても、ドローンのモーターを回して飛ばせる構成は作れます。
しかし、カメラ映像をゴーグルへ送れないため、操縦者はFPV映像を見ることができません。
つまり、VTXがなければ一般的なFPV飛行はできません。
ドローンの役割を人の身体に例えると、次のようになります。
VTXは機体を直接動かす部品ではありませんが、映像を見ながら操縦するFPVドローンには欠かせない部品です。
初心者の方が混同しやすいのが、プロポとVTXの違いです。
どちらも電波を使用しますが、送る情報と方向が異なります。
| 機器 | 送るもの | 電波の方向 |
|---|---|---|
| プロポ | スティックやスイッチの操作 | 操縦者から機体へ |
| VTX | カメラ映像 | 機体から操縦者へ |
プロポは「右へ進む」「上昇する」「着陸する」といった操縦者の指示を機体へ送ります。
VTXは、機体のカメラが見ている景色を操縦者へ送り返します。
この2つの通信が同時に働くことで、操縦者は映像を見ながらドローンを動かせます。
GoProなどの撮影用カメラと、FPVカメラ・VTXは役割が異なります。
GoProは、高画質な映像を記録することを得意とするカメラです。一方、FPVカメラとVTXは、操縦するための映像をできるだけ遅れなく届けることを重視しています。
| 機器 | 主な目的 |
|---|---|
| FPVカメラ | 操縦するための映像を撮る |
| VTX | 操縦映像をゴーグルへ送る |
| GoPro・Naked GoPro | 後で使用する高画質映像を記録する |
シネマ撮影用FPVドローンでは、FPVカメラとGoProの両方を搭載することがあります。
操縦者はVTXから送られるFPV映像を見て飛ばし、完成映像にはGoPro内部へ記録された高画質データを使用します。
なお、一部のデジタルVTXには録画機能があり、操縦映像と比較的高画質な記録映像を一つのカメラでまかなえる場合もあります。
機体前方に取り付けられたFPVカメラが、ドローンから見える景色を撮影します。
この段階では、映像はまだ機体の中にあります。
カメラから出力された映像信号が、配線を通ってVTXへ送られます。
アナログ機ではカメラの映像線がFCまたはVTXにつながっています。デジタル機では、カメラとVTXが専用ケーブルで接続された一つの映像システムとして販売されることが一般的です。
VTXは受け取った映像を、無線で送れる信号へ変換します。
その信号がVTXに取り付けられたアンテナから送信されます。
操縦者が使用するゴーグルや映像受信機が、VTXから送られた電波を受信します。
アナログではVTXとゴーグルの周波数を合わせます。デジタルでは、VTXとゴーグルをバインドして接続する方式が一般的です。
受信した信号が映像に戻され、ゴーグル内部のディスプレイに表示されます。
これにより操縦者は、ドローンに乗っているような視点で飛行できます。
VTXは、アンテナと組み合わせて使用します。
アンテナは飾りではなく、VTXが作った電波を空間へ送り出すための大切な部品です。
アンテナが外れた状態でVTXへ電源を入れると、送り出せなかったエネルギーがVTXへ戻り、発熱や故障につながることがあります。
特に出力の高いVTXでは、短時間の通電でも故障する可能性があります。
初心者の方は、次の習慣をつけておきましょう。
バッテリーを接続する前に、VTXアンテナが正しく取り付けられているか確認する。
また、アンテナのコネクタには複数の規格があります。
見た目が似ていても接続できないものがあります。無理に押し込まず、VTXとアンテナのコネクタ規格を確認してください。
FPV用VTXは、大きく「アナログ方式」と「デジタル方式」に分かれます。
どちらも映像を送るという役割は同じですが、画質、遅延、価格、対応ゴーグルなどが異なります。
アナログVTXは、FPVドローンで長く使われてきた映像送信方式です。
主な特徴は次のとおりです。
アナログ映像は、昔のテレビのように少し粗く見えます。しかし、遅延が小さく、映像が乱れ始めることで電波状況の悪化に気づきやすいという特徴があります。
初心者向けの屋内マイクロドローンや、軽量性を重視する機体では、現在も広く使われています。
デジタルVTXは、カメラ映像をデジタル信号として送信する方式です。
代表的なFPV映像システムには、次のようなものがあります。
主な特徴は次のとおりです。
デジタルVTXは映像が鮮明なため、シネマ撮影、建物内の飛行、障害物が多い場所などで大きなメリットがあります。
一方、すべてのデジタル製品に互換性があるわけではありません。
Walksnail VTXの映像をDJIゴーグルで直接受信することはできず、DJI VTXの映像をWalksnailゴーグルで直接受信することもできません。
| 項目 | アナログVTX | デジタルVTX |
|---|---|---|
| 映像 | 粗め・ノイズが見える | 鮮明 |
| 遅延 | 非常に小さい | システムによって異なる |
| 価格 | 比較的安い | 比較的高い |
| 重量 | 軽い製品が多い | やや重い製品が多い |
| 発熱 | 比較的少ない | 大きい製品が多い |
| 互換性 | 同一周波数なら合わせやすい | 同じシステム内に限定される |
| 小型機 | 搭載しやすい | 1S対応の小型製品もある |
| 主な用途 | 練習・レース・軽量機 | シネマ撮影・高画質操縦 |
初期費用と軽さを重視するならアナログ、映像の見やすさを重視するならデジタルが有力です。
VTXの商品説明には、次のような数字が記載されています。
この数字は、おおまかにはVTXが電波を送り出す強さを表します。
一般的に出力を上げると遠くへ映像を届けやすくなりますが、単純に出力だけで通信距離が決まるわけではありません。
映像の届きやすさには、次の要素も関係します。
高出力にすれば必ず安全になるわけではありません。発熱や消費電力が増え、周囲のFPV機へ強い混信を与えることもあります。
必要な範囲に合わせ、認められた出力で使用することが大切です。
複数のVTXを近い場所で同時に使用する場合、同じ周波数では映像が混ざったり、片方の映像が見えなくなったりします。
そのため、VTXでは使用する周波数を「チャンネル」として選択します。
テレビのチャンネルを切り替えるイメージに近く、機体側VTXとゴーグル側を同じチャンネルに合わせることで映像を受信します。
同じ場所で複数人が飛ばす場合は、単に違うチャンネルへ設定するだけでなく、周波数同士の間隔も確保します。
特にFPVフィールドでは、バッテリーを接続する前に、使用してよいチャンネルを管理者や他の利用者へ確認してください。
無断でVTXの電源を入れると、飛行中の別の操縦者の映像を乱し、墜落させる危険があります。
VTXは映像信号を電波として送信する際に熱を発生させます。
特にデジタルVTXや高出力VTXは発熱が大きく、機体が止まった状態では冷却が追いつかないことがあります。
飛行中はプロペラの風で冷やされますが、机の上で長時間電源を入れると温度が上がります。
製品によっては、故障を防ぐために次のような機能を備えています。
設定作業をするときは、小型ファンで風を当てるとVTXの過熱を防ぎやすくなります。
Pit Modeは、VTXの送信出力を非常に小さくする、または通常送信を抑える機能です。
主にFPVレース会場で使用されます。
近くで別の機体が飛行しているとき、待機中の機体へバッテリーを接続すると、VTXの電波が飛行中の映像へ干渉することがあります。
Pit Modeを使用すると、周囲への影響を抑えながら機体の設定や確認を行いやすくなります。
ただし、Pit Modeでも電波を送信している製品があります。無線局免許が不要になる機能ではなく、どこでも自由に通電できるという意味でもありません。
アナログFPV機では、カメラ映像を直接VTXへ接続せず、途中でFCを通す構成があります。
これは、FCが映像へ文字情報を重ねるためです。
ゴーグルに表示される次の情報を「OSD」と呼びます。
映像の流れは次のようになります。
デジタルVTXでは、FCとVTXをUARTで接続し、MSPなどの通信を使ってOSD情報を表示する方式があります。
初心者の方は、出力や通信距離だけでなく、機体とゴーグルに合うかを確認してください。
最初に、使用する映像方式を決めます。
アナログゴーグルには、アナログVTXを使用します。
デジタルでは、同じシステムに対応するVTXとゴーグルが必要です。
VTXには使用できる電圧範囲があります。
1S専用VTXへ3Sバッテリーの電圧を直接入れると、故障する可能性があります。反対に、必要電圧を下回ると正常に起動しません。
商品ページや配線図で次の表記を確認します。
65mmのマイクロ機と3.5インチシネフープでは、搭載できるVTXの大きさが異なります。
確認する項目は次のとおりです。
高出力だから優れているとは限りません。
小型機では、VTXの発熱がFCやバッテリーへ影響する場合があります。フレーム内部に収まり、プロペラの風が当たる位置へ設置できるかも重要です。
アナログVTXとデジタル専用ゴーグルは、そのままでは使用できません。
また、デジタル同士でもWalksnail、DJI、HDZeroには基本的に互換性がありません。
ELRSは操縦方式であり、Walksnailやアナログは映像方式です。同じメーカーや方式へ統一する必要はありません。
例えば「ELRS受信機+Walksnail VTX」という組み合わせは問題なく成立します。
高出力VTXは発熱と消費電力が増えます。屋内のマイクロドローンでは、低出力で十分な場合があります。
VTX故障の原因になります。バッテリー接続前にアンテナを確認してください。
海外通販で購入できることと、日本国内で使用できることは別です。対応周波数、技適、無線局申請の可否を確認します。
VTXは電波を送信する装置なので、日本国内では電波法の対象になります。
一般的なFPV用5.8GHz・5.7GHz VTXは、購入しただけですぐ電波を送信できるとは限りません。
大まかには、使用目的によって次のように分かれます。
機体重量が100g未満でも、屋内で使用しても、電波法がなくなるわけではありません。
資格や開局の詳しい内容は別記事で説明し、VTXを購入するときは「国内で申請・使用できる製品か」を販売店へ確認してください。
VTXは、FPVカメラの映像を操縦者のゴーグルへ電波で届ける映像送信機です。
カメラがドローンの「目」だとすれば、VTXは、その目で見た景色を操縦者へ届ける「中継役」です。
初心者の方は、まず次の点を覚えておけば十分です。
VTXの仕組みが分かると、機体とゴーグルの組み合わせや、商品ページに記載された出力・チャンネル・対応電圧なども理解しやすくなります。
